「書店活性化のための課題(案)について」パブリックコメント意見
図書館問題研究会全国委員会は、経済産業省の関係者から指摘された書店活性化のための課題(案)について、パブリックコメントの意見を提出しました。
◯図書館の納入における装備費用の負担(p12)
図書館に納入する書籍の装備について、納入事業者の負担で装備を行うことが商習慣として定着しているが、書籍販売による利益率が低下していくなか、定価での納入ではその負担に耐えられない状況となってきている。地元書店から図書館への図書納入を維持していくためには、図書館予算として、資料費とは別に装備代を確保する必要があるが、自治体経費削減の流れのなか、予算を捻出できる自治体は限られてくると考えられる。地元書店からの納入を条件に装備費用についての一定の補助制度、或いは交付税措置を導入すべきではないか。
◯地域書店による公共図書館への納入(p12)
公共図書館のうち、指定管理者制度の導入や、業務委託しているところを直営に戻す。指定管理費や委託費には消費税がかかっている。これらの消費税にかかる費用を図書購入費に充当すれば、図書の購入も増加して書店の販売機会も増加する。
また、指定管理者や委託業者で雇用されている人はおしなべて低賃金である。消費税のかからない直営に戻せば、賃金を上げることが可能になる。
◯図書館の納入における装備費用の負担(p12)
図書館システムへのJAPAN/MARCの導入を推進する。
図書館のコンピュータシステムに使用されるMARC(機械可読目録)は、諸外国では一般的に国家的な機関が作成するナショナルMARCと呼ばれるものが使用されているが、日本では、民間会社の作成する有料のMARCの使用が圧倒的に多くなっている。JAPAN/MARCは無料で提供されているが、民間MARCに比べて提供が遅くなっていることや、図書館システムで民間MARCから移行することが難しいことから、ほとんど普及していない。民間MARCからJAPAN/MARCに移行して、MARCにかかる費用を図書購入費に充当すれば、図書の購入も増加して書店の販売機会も増加する。
国家的施策としてJAPAN/MARCの導入を推進する必要がある。
◯地域書店による公共図書館への納入(p12)
図書館の指定管理業者の政治への影響を排除する。
政治資金収支報告書によれば、図書館指定管理業者が政治家の政治資金パーティーに資金を拠出している。指定管理業者が地方自治体に影響力のある政治家に資金を拠出するのは不適切である。指定管理業者の政治への影響を排除する必要がある。
◯書店の機能
p6(2)「約4分の1の市町村において、書店がない」とあるが、これは日本出版インフラセンターに登録している本やのことで、実際は、いま独立系と言われているような書店やブックオフなどの書店は含まれていない。書店が減っている理由は、商売にならないから閉めたのか、賃貸契約の更新時に(建て替え等で)閉店したのか、後継者不足で閉店したのか等調査されていないのではないか。こういったことを調査した上で分析しないと、思い描く結果にはならないのではないか。
◯来店客数の減少
p10、1行目、「スマートフォンやゲーム、SNSの普及により「読書離れ」が深刻化し」とあるが、文化庁の調査ではマンガや雑誌は、ここでいう読書から除外している。「特に、雑誌やコミック等の購買の減少により」とあるが、そもそも文化庁の調査で雑誌やコミックは除くとしている段階で、「読書離れが深刻化」と来店客の減少は関連づけられないのではないか。
◯公共図書館の複本購入による売り上げへの影響
p12 図書館は、単純に来館者や貸出冊数の多寡で評価するために統計を取っているわけではない。利用者は本当に必要な、欲しい本は購入することを知っている。ただ、読書の楽しみ、知る喜びに気づくには、地道な読書推進を展開しなければならない。活字を読むことにも訓練が必要であり、何の本を読んで読書が身近なものなるのかは、人それぞれである。いわゆるベストセラー本を読んでその著者の作品が好きになった人は、図書館で予約する前に購入する人もいる。しかし、予約してから1年以上も待たされてから提供されても、すでに興味は消え、読書から遠ざかることも多い。そんな人を減らすために一定の条件を定め複本の購入をせざるを得ないのではないか。図書館は読書推進のために最低限の複本を購入し、より多くの住民に図書館利用を呼び掛けているのである。
◯公共図書館での新刊貸出による影響 (p12)
新刊本の貸出をしなくなったら購入が伸びるというのは、どこかで検証されたのだろうか。恐らく買いたくない人・買えない人はどんな状況になっても購入しない。新刊本が貸出しできないということになれば、公共図書館でも今と同じ分量で本の購入をするとは限らず、かえって本が売れなくなるのではないだろうか。ますます読書推進が進まなくなるのではないか。
◯地域書店による公共図書館への納入(p12)
独占禁止法の適用除外があるが、例外的に官公庁は割引が可能になっている。これをやめ(法改正し)、官公庁でも定価で買うべきではないか。また、地域の書店では公共図書館での需要をすべて受け入れられないくらいの規模の書店も多い。恐らく本の価格を上げ、書店の取り分を増やさないと人件費や送料に見合った営みができないのではないか。
◯「図書館の納入における装備費用の負担(p12)」
図書資料代と装備費用は別に考えるべきであり、装備に係る費用はきちんとした金額で契約しないと、こういったところからもワーキングプアが生まれる。国が調査をする必要があるのはこういったところで、是正が必要なら是正を進めることが大事なのではないか。
◯文化拠点としての書店の重要性の理解の希薄化(p17)
書店は文化拠点ではなく、p5でもあるように産業なのではないか。産業として成り立たない仕組みになっていることが、書店減少をもたらしていないか考えなくてはならないのではないか。「文化だから守るために税金を投入する」といったら、全国の様々な文化にも税金を投入する必要がある。