分科会のお誘い

2025年6月7日

第1分科会:市民のための図書館の原則とは?
現在、全国の自治体では、公共施設再編計画(公共施設等総合管理計画)及び、民活導入(指定管理者制度・PFI・PPP・DBO方式等)が進行しています。多くの図書館で、自治体の他部門・民間等との複合化が検討され、実施される動きが広がっています。また再編計画として、これまでの図書館拠点の統合・廃止提案の事例も少なくありません。
この分科会では、複合化によるメリットとデメリットを確認・整理しながら、メリットを最大限に活かした図書館づくりについて考えます。嶋田学氏(京都橘大学教授)から、「公共施設再編下における複合施設化の課題と展望 〜指定管理・PFI・PPP・DBO方式による運営方式の課題も含めて〜」として、基調となる報告をしていただき、その後、市民のための図書館がすべきこと、必要な改革について事例を出し合い、討議します。論点としては「融合型の施設デザインとサービスデザインの評価」「複合化によるサービス主体の多様化と運営主体について」等を予定しています。
参加される方で身近な複合化や再編計画の事例をご存知の方は、6月20日(金)までに情報をお寄せください(1件A4 1枚程度でお願いします。宛先メールアドレスtmk55★tomonken.sakura.ne.jp(★は半角@に変換してください)(図書館問題研究会事務所) 件名は「第一分科会あて」としてください。)。いただいた事例は担当でまとめて分科会当日に共有したいと思います。
今後の市民のための図書館づくりを考える上で参考になる視点を参加者の討議で作っていきたいと思います。                          (担当:高野・立川・中野、現地:前崎)
(第1分科会は参加者多数のため、今後、お申込みされる方は他の分科会をお選びください。今後、第1分科会をご希望いただいた方は第2希望に移っていただきます。ご了承ください。6月6日に追記しました。)

 

第2分科会:資料

図書館の中心には資料があり、個々の図書館において選書は重要である。図書館のコレクション構築には、予算、出版流通の状況、職員の選書力など課題は多くあります。

公立図書館の資料購入費減少は続いており、雑誌の休刊・電子出版化の増加、書籍の出版点数は多いが部数が少ないことなどから入手が難しい状況も近年進んでいます。書店の減少については、一昨年から書店業界からの問題提起もあり、国としての取組みも進められています。その中では図書館が書店減少の要因の一つとみる考えもあり、図書館の選書、購入についても注目されています。図書館にはどんな選書手法・コレクションの構築がよいのか、折に触れ考え・学ぶことが大切です。

全国的に図書館設置が進み、資料費は増加傾向にありましたが、近年コロナ禍以前に比べ減少に転じ、貸出数の減少も見られるようになっています。一方新たな生活様式のひとつともいえる、事前に予約する傾向は図書館利用にも現れ、予約数は増加傾向にあります。

残念ながら統計調査では確認が難しいことですが、要望される資料も多様化し、先に述べたように出版部数の少ないこと、資料費が減少していることから、要望に応えきれない状況もあるのではないかと思われます。資料費確保へ全国的に取組む必要があります。

このような状況下で、それぞれの図書館のサービス対象地域での多様化する要望に応える選書の力も改めて必要ではないでしょうか。

今回の分科会では、『本の世界の見せ方』の著者・明定義人さんから実践に基づく選書論を、滋賀県守山市立図書館の佐藤志歩さんから図書館を新しく開設したご経験からのお話をお聞きする予定です。

参加者からの実践も交え、現場に持って帰ることのできる分科会としたいと考えています。 (担当:今井・小池・村上、現地:巽)

 

第3分科会:サービス

『市民の図書館』(1970,日本図書館協会)が発行されて55年、日野市立図書館の実践を通して図書館サービスを考えてきた本書をもう一度振り返ります。

DX化が進み、図書館を巡る状況は日々変化をしています。ネットを活用し資料や情報をいつでもどこでも入手できるという利便性が進む一方で、物価高騰や国際情勢の激変で図書館はもとより人々の生活にも大きな影響を及ぼしています。そして人々の生活格差は広がる一方です。

カウンターでの利用者とのやり取りや職員間のコミュニケーションなど、55年前と変わらない風景があるのも事実です。しかしここにも様々な問題や制約も生まれています。そのような背景を踏まえながら、「資料をいかに利用者に手渡していくか」シンプルかつもっとも重要なテーマを様々な人たちの実践を通して特に幅広い年代の司書の視点を通して考えていけたらと思っています。みんなが参加して大いに語り、聴き、いろんな発見をし明日のサービスに生かすことができたらと考えています。

今回はベテラン司書と若手司書の発表を企画しました。まず、ベテラン司書の発表者には、日頃から様々な取り組みをを実践されている滋賀県東近江市立八日市図書館の橘副館長に、若手は京都府八幡市民図書館の野間航司書に、実践に基づいた「カウンターの向こうとこちら」とをお話しいただきます。そして発表を受け参加者みんなが意見交換と実践とを紹介する全員参加型の分科会を予定しています。             (担当:泉・中沢・微笑、現地:野間)

 

第4分科会:子ども

令和5(2023)年3月28日に通知された、国の「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」においては、1.不読率の低減、2.多様な子どもたちの読書機会の確保、3.デジタル社会に対応した読書環境の整備、4.子どもの視点に立った読書活動の推進という、4つの基本的な方針が掲げられています。これらを実現するためには、家庭や学校図書館、公共図書館等だけではなく、書店や福祉団体等、地域の様々な団体との連携・協力が不可欠です。通知文のなかでも、「子どもの読書活動の推進に当たり、都道府県及び市町村において、福祉部局等との連携や、学校、図書館、地域の民間団体、民間企業といった関係者との連携、協力に努め、横断的な取組を行い、地域に根ざした子どものための読書環境の醸成に取り組む体制を整備していただくようお願いいたします」と明記されています。

一方、社会情勢は日々変化し、貧困や格差社会、デジタル化、グローバル化、価値観の多様性など、特に近年の子どもたちを取り巻く環境の変化はめまぐるしい現状にあります。

第4分科会「子ども」では、太成学院大学人間学部教授の近藤真理子先生(2024堺市子ども読書活動推進計画改定懇話会副委員長)をお招きし、様々な、子どもたちを取りまく状況や現状についておはなしいただく予定です。また、子どもたち自身の「知る権利」、「育つ権利」について、さらに、その保障についてもおはなしを伺う予定です。

公共図書館や学校図書館の職員だけではなく、さまざまな立場で子どもたちに携わる、たくさんの方々にご参加いただき、今、子どもたちのために何ができるのか、公共図書館や学校図書館等における児童サービスとは何か、今、児童サービスに何が求められているのか等をみんなで語らい、情報を提供し合い、考えて、より充実した児童サービスにつなげていきましょう。また、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画(読書バリアフリー基本計画)」の観点からも、子どもたちの読書環境について、みんなで考えていきたいと思います。                                  (担当:小川・徳留・藤巻、現地:稲垣・長澤)

 

第5分科会:職員問題  図書館に正規司書を増やすには—自治体組織の中の図書館を考えよう

日本各地の自治体では正規専門職として働く司書は増々減少し、『日本の図書館 統計と名簿 2023』(日本図書館協会)では専任職員の司書が5000人を切っています。

今回は正規雇用の司書が占める割合が比較的多いといわれる関西の事例を中心に、自治体の組織としての公共図書館を取り上げたいと思います。まず山口源治郎さんに正規司書の継続採用の状況とそれが可能となった理由を導入として話していただきます。さらに大阪府内の公共図書館に勤務する司書の方に正規専門職司書が継続的に採用されている図書館での事例を報告していただき、正規司書のいる図書館についてその良さを再認識できればと思います。

公共図書館の設置は自治体の責任であるにも関わらず、そこで働く職員の多くが非正規化しています。一方民間会社による運営や派遣の職員も増加しています。このような職員体制・図書館運営でいいのか、自治体が責任をもって正規職員を採用し図書館運営をしていくにはどうしたらいいのかを参加者で検討をしていきたいと思います。またせっかく正規で採用されたのにもかかわらず退職してしまう図書館司書がいることも問題です。少数となってしまった正規司書が自治体のなかで働き続け、力を発揮していくには、どのような体制を整えればいいのでしょうか。自治体内の他の部署と協力して働き、その中から管理職としても適切な人材となり、いずれ司書職館長に就く力を持つために、司書はどのような意識を持ち働く姿勢が必要なのでしょうか。正規職員である司書を活用することによって住民サービスを向上させるためにはどうしていったらよいのか、正規司書がいる図書館の未来について話し合ってみませんか。                              (担当:清水・高柳・林、現地:高橋敏)

 

第6分科会:住民 

指定管理者制度の導入、公共施設再編に伴う図書館の統廃合などで、住民の活動が活発になってきているように見受けられます。

1960 -70年代の図書館をつくる時代は、新興住宅地などで文化施設が何もない中で、地域に図書館がほしいという住民の自発的な活動が行政を動かしていったと言えるでしょう。しかし、昨今は、指定管理者制度導入、図書館の統廃合など行政の進めようとする施策に対して、ろくに知らされてもいなかった住民が、行政に抵抗するような図式に変化しているように見えます。この両方の間に、ようやくできた図書館を友とし、その発展を支えようとする活動があります。これは今も続いています。

行政の施策の大きな社会的背景として、地域の人口構成の変化、大型店舗や工場などの撤退による地域の衰退、公共施設の老朽化などがあり、これら地域の変化は住民としても看過できない問題です。

一方、図書館建設に当たって市民の意見を積極的に聞き、取り入れようとするところや、複合融合型の施設で住民が活発に活動する例も見られます。

住民と行政の関係をどのように構築していくか、構築し直していくか、社会背景を考えるとき、いたずらに不信感を募らせ対立する構図にするのは、行政としても賢くないといえないでしょうか。

そして、活動するメンバーの年齢構成はどうなっているでしょう。

各地の住民の活動はどうでしょうか。近畿圏の住民運動の活動状況の報告をいただき、参加される皆さんと意見交換していきたいと思います。

報告(予定):大阪府豊中市、滋賀県湖南市など

(担当:川越・関・松本、現地:船橋・横田・脇谷)

Posted by tmk