部落差別と図書館の自由、そして図問研 村岡和彦

2026年2月13日

1.部落差別事象は、古くから絶えずに続いているものだが、多くの差別事象と同様「見えない」ものとして扱われてきやすいものでもあり続けている。
あらゆる差別事象に共通のことだが、「名乗る」こと(カミングアウト)そのものが難しいという現実がある。さらに、従来からある世間の無理解・無関心の中でネット社会化が進み、当事者の意に添わない「晒し」(アウティング)が、ネット化以前とは比べものにならない強さで凶器として機能してきている。
2.そうした流れの中、公共図書館界はどう向きあってきたのだろうか?
文献リストとして見てみると、1975年11月に「部落地名総鑑事件」の存在が明らかにされ、翌12月に総務庁(当時)発出の通達によって全国の公的機関での対応が厳しくすすめられることとなったのを受けて、地方自治体の下部組織である公共図書館も、より深く研究・調査の対象としてこの問題に関わることになった。これは、必ずしもそれ以前になかった動きではないが、この総務省通達を通じて、全国的な政府自治体の課題として位置付けられたことを受けての、大きな取組となった。また1975年から検討を始めた「図書館の自由に関する宣言 1979年改訂」の検討プロセスにも大きな影響力をもつこととなった。
その流れで、「人権またはプライバシーを侵害するもの」についての例外的な閲覧制限条項が定められることとなっている。この条項は、本来は部落差別事象を専一的に考えるものだった。
3.1980年代から1990年代にかけて、部落差別事象に関わる資料の扱いの課題は続いているが、ことの性質上あまり表面化はしない。そのことと相まって、課題としては目に見えにくくなってきたし、21世紀になってからは、ほとんど見かけない論点となったと言っていい。
4.「お役所」の進める「人権施策」という点では、課題への無意識と過剰反応とが混在した対応が見られる。こうした事例についても確認しながら、図書館と部落差別事象の今を見つめる。

Posted by tmk