「第三の居場所と図書館」                  竹内ひとみ

「第三の居場所と図書館」                                      竹内ひとみ(東京支部)

1.「第三の居場所」とは
①レイ・オルデンバーグ.サードプレイス:コミュニテイの核になる「とびきり居心地よい場所」.忠平美幸訳/マイク・モラスキー解説.みすず書房,2013,480,35p. (原著:The Great Good Place: Cafes, Coffee Shops, Bookstores, Bars, Hair Salons and Other Hangouts at the Heart of a Community. 出版年1989) レイ・オルデンバーグ(1932年生まれ、アメリカの都市社会学者、西フロリダ大学社会学部名誉教授)

「第一の居場所」は家庭、第二の居場所は職場、そして「第三の居場所」とは個人が目的もなく、ふらりと行けて短い休憩の楽しみ方を心得ている知り合いが迎えてくれる場

8つの特徴(ⅰ中立の領域、ⅱ人を平等に、ⅲ会話が主な活動、ⅳ利用しやすさ、ⅴ常連、ⅵ目立たない存在、ⅶ遊び心の存在、ⅷもう一つの我が家)

2.日米における「第三の居場所」である公共図書館

①根本彰. 場所としての図書館・空間としての図書館 : 日本、アメリカ、ヨーロッパを見て歩く. 学文社 , 2015,125p.

1970年代の公共図書館のイメージは「勉強部屋」、1980年代は「本を借りる場所」。そして1990年代から「場としての図書館、空間としての図書館」その後の電子図書館から公共図書館、大学図書館の機能面を中心とした図書館建築論を展開

②ジョン・ブッシュマン;グロリア・J.レッキー. 場としての図書館.川崎良孝等訳, 京都:京都大学図書館情報学研究会, 2008, 10,405p.(原著:The Library as Place: History, Community and Culture, by John E. Bushman and Gloria J. Leckie. Greenwood Publishing Group、Inc. CT, USA, 2006.)

本書の構成は、第1部 歴史における図書館という場、第2部 コミュニテイの場としての図書館(図書館を経由して成立したコミュニテイが論点)第3部 学習と学術の場としての研究図書館、この三部構成となっている。今回は本書中に表されている2004年に開館したシアトル市立図書館を具体例として取上げる。

  1. 公共図書館における「第三の居場所」」の例

①シアトル市立図書館:米ワシントン州のシアトルダウンタウンに位置する中央図書館(1891年創設)2004年にユニークな新館が開館。2004年10月から3週間に渡って利用者、通行人に対してインタビュー調査を行った。その内容は、「物理的な場としての図書館」、「社会的な場としての図書館」、「情報の場としての図書館」としてオルデンバーグ.サードプレイス「第三の居場所」となっているのか。その結果として、「気持ちの上では図書館は第3の場かもしれないが、オルデンバーグの8つの規準を十分に満たすのはごく少数でしかなかった。」という結論であった。

②伊万里市民図書館<住民利用者の声が図書館を創造する>

・1960年代後半からの小学校での「母と子の読書会」の活動の中から新しい図書館建設の要望が起こり「図書館づくりをすすめる会」が発足。当初は図書館について学ぶための輪読会などを開いた。1989年に「図書館建設の要望書」を市へ提出。その後調査費の予算化。

・この時代は地方の時代が叫ばれ、1991年に図書館長として朝日新聞OBの森田一雄が就任し、市の文化振興特別顧問として、生涯学習の旗印に「伊万里学」を提唱。伊万里学はふるさとを学び直し美しき成学社として自立した市民を育て、まちの将来を考えることをテーマとし、二一世紀のまちづくりの文化戦略と言われた。

・図書館の基本設計ができた時点で利用者との「懇話会」を開き設計協議が行われた。ここで出された要望の一つを紹介する。

・「図書館の本を学校で利用したい。学校司書の研修の場が欲しい」⇒「移動図書館車「ぶっくん」で学校へ大量の本を貸出、学校司書の研修会も図書館で実施」。

・また設計協議がスタートした1993年から利用者の求める図書館のあるべき姿を考えるために「図書館づくり伊万里塾」を毎月開催。その内容は講演会、シンポジウム、見学会など多岐にわたっている。重要なのは市民と図書館の運営主体と市が共によい図書館を創っていくという協働の活動が終始している点である。

出典:青柳英治編著. 市民とつくる図書館:参加と協働の視点から.第Ⅱ部 施設計画・管理運営の側面から捉えた事例 第5章 市民参加と協働が育てた伊万里市民図書館(古瀬義孝著).勉誠社, 2021, 274p.

③杉並区立高円寺図書館<YAの居場所>
・高円寺図書館は2025年4月1日に「コミュニティふらっと高円寺南」内に移転して開館。旧高円寺図書館の蔵書を引き継ぎ、利用者であるヤングアダルト世代の子どもたちとの相互作用活動によって発展している。
・「あつまれ!中高生 ティーンズタイム」を設け,「ティーンズシート:毎日16時から20時50分:一部の席を中高生の優先席としている」
「ティーンズルーム:火・水・金16時から20時50分:第一多目的室と楽器練習室を中高生に無料で開放」「杉並区のティーンズのためのアートスクール」事業,「YA展示」など。
・地下1階にはカウンターがなく極力大人の介入を押さえようとしている。ヤングアダルト世代の主体性を尊重し、ヤグアダルト世代の子どもたちにとって居心地の良い居場所としてのYAコーナを運営している(2025年10月東京支部総会後の見学会より)

4.これからの公共図書館における利用者の居心地の良い居場所づくり
①何が求められているのか、対象は?現在はYA、高齢者、あらゆる世代の居場所
②公共図書館側が提供するだけではなく、住民が求めている「居場所」、有料無料
③公共図書館の価値と意味-誰にとっての価値・意味か?時代的な価値と意味の変遷?

Posted by tmk