9月号
目次/2025年6月号/みんなの図書館 SEPTEMBER 2025 No.581
特集:議会図書室入門 Part4
特 集
特集にあたって 編集部 03
図書館経験者から見た議会図書室を取り巻く状況と、その可能性 白木悠治 05
自治体における議会の役割と 田口一博 12
議会図書室 北村純一 18
小規模自治体議会の三大「ない」を乗り越える:議会図書室の実務的考察
一般
欲しい情報に辿りつくGoogle 検索の裏技紹介「そっちじゃない!」を減らす Google NOT 検索 Part 2
東京学芸大学「メディア資源論」履修生一同(2025 年度)/石井保志 25
闘病記文庫開設 20 周年を迎えて 槇盛可那子 38
臨床「知」図書館学誕生 3 宍道 勉 44
第2章 臨床「知」図書館学のきっかけ(承前)~終章
連載
図書館の生態系 35 公共的サービスを提供する市立図書館には単一組織としての ‘ガバナンス’ が欠如している‼公共図書館の窓口業務委託が産み出したものは、コミュニティの下降スパイラルの増強 山本順一 54
ほん・本・Book
図書館にゲームを!図書館の新しい可能性 外村 廉 74
これからの図書館情報学人口知能と共生する図書館 永井 宝 75
column: 図書館九条の会
秘匿された青春の記録を読む 大畑美智子 78
ひろば
図書館のトイレ 中川 豊 79
Crossword Puzzle; 492 24
図問研のページ
会員異動/今月贈っていただいた資料/6・8 月号訂正/編集後記 80
原稿募集 『みんなの図書館』にあなたの原稿をお寄せください。23
みんなの図書館編集部:明石 浩/今井つかさ/片野裕嗣/川越峰子/高野 淳/西河内靖泰/微笑正凡/藤巻幸子/松本芳樹/村岡和彦/村上さつき
[特 集]
特集にあたって 編集部 文責:石井保志(議会図書室棚プロジェクト代表)
1.図書室担当者の課題
「議会図書室入門」の特集も、4 回目となりました。今回は、議会事務局に焦点をあてて、議会図書室の業務の位置づけと課題を考えてみたいと思います。課題のひとつに議会図書室の担当者の属性のことがあります。県立図書館や市立図書館等からの出向者がある議会図書室もある一方で、多くの図書室では専任で正規の職員はほとんど配置されていません。
公共や大学の図書館でさえ、正規職員の配置は難しいのですから、議会図書室ではいっそう難しいのが現状です。それぞれの自治体での図書室の業務は、議会事務局の書記や事務職の方、事務と兼務で図書担当の方が行うなど様々なパターンで行われています。専任の職員がいないからとあきらめるのではなく、人がいない前提で議会図書室を考えてみる、というのがこの特集の趣旨になります。特に、都道府県や政令市に比べ、資料が充分ではない小規模な自治体にも焦点をあてて、既存の図書館ネットワークの活用や、広域連携、オンラインレファレンスなどの可能性の有無を考える機会としていきたいと思います。
2.小規模自治体に目を向ける
今回の執筆者は、自治体や議会の勤務経験のある方々です。さらに議会図書室にも心を寄せている「稀有な存在」の方でもあります。議会の役割とともに、議会事務局の内情を知らずにいては「議会図書室」の改善向上の本質に迫れないのではということで、今回も特集となりました。この特集で、小規模の自治体の現況に触れる機会となったことを、嬉しく思います。人口規模が小さく、議会事務局職員も少ない自治体であっても、行政監視機能や政策立案に必要な情報が求められています。そうした時には図書館の機能はお役に立てるのです。議員が多くの情報や資料をもとに議決していく、そのための情報提供は、自治体の規模は関係ないのです。 “ 議員は図書室を使う習慣がない ” “ 議員自身がネットで調べている ” “ 議員は職員に口頭での説明を求めてくる ”、だから議会図書室いらないのでは、とはならない。
3.議会図書室の広域の運営は可能か
特集では、「広域な連合によるレファレンス」にも触れています。メールやオンラインによるレファレンス受付、利用の秘密厳守、議会のネット中継・録画の活用、など、司書がリモートワークでもレファレンスができる時代です。少人数の議会事務局が司書を抱えることは現実的でないことに鑑み、「自治体広域連合によるレファレンス、資料提供」は不可能なアイディアなのでしょうか。「学校図書館」や、かつての「国立大学外国雑誌センター館」など図書館界では、様々な運営アイディアが実践されているのです。
地方自治法により設置が義務である議会図書室の存在自体は確保されていますが、中身の充実にはほど遠いのが現状です。では優先的に充実すべきことは何でしょうか。資料や調査能力を使って「議員のお役に立つこと」、「議員をサポートする議会事務局のお役に立つこと」がその答えのひとつではないでしょうか。先進事例がでてくれば、全国の議会図書室で「議員が等しく行政監視、政策立案等に関する情報・資料提供」の方向で取り組んでくれるのではないでしょうか。市民の代表である議員は、議決や政策提言するための判断材料になる多くの情報の収集を自ら行わなければならないのです。議員各自の情報リテラシーも様々で、情報収集に手慣れている方もいる一方で、そうしたことが必ずしも得意でない方もいます。地域の図書館に気軽に行けない議員も多いことでしょう。議員や議会事務局で、慣れない文献入手や事項調査で四苦八苦されている方々を、相互利用やレファレンスで解放しませんか。 「市民の代表である議員への情報アクセス保障」という命題は、“ 議員も市民だから、今更、新しい命題を作らなくてもいいのではないか ” と言う方もいるでしょう。しかし、「市民への情報アクセスを保障する」公共図書館の使命とどこが違うのでしょうか。生成AI時代がやってきた現在、アイディア勝負です。まず図書館界での日常業務で「議会図書室の課題」を氷解することができないか、考えてみたいと思っています。