出版物への消費税軽減税率の適用を求めるとともに、「有害図書」の自主規制に反対します
2018年9月10日
図書館問題研究会全国委員会
出版物への消費税軽減税率の適用を求めるとともに、「有害図書」の自主規制に反対します
図書館問題研究会は、図書館の発展を願う図書館員や研究者、住民で組織する個人加盟の団体です。
2019年10月に、消費税が8%から10%に増税されることが予定されています。私たちは、逆進性の強い消費税及びその増税に強く反対します。しかし、増税が避けられないという場合には、図書・雑誌・新聞への軽減税率の導入を求めます。
厳しい経済状況を反映し、エンゲル係数は上昇し、所得の中央値は減少しています。経済的に厳しい人々に対しても、公共図書館は心の糧となり、意思決定の基礎となる資料(出版物)を提供する責務がありますが、厳しい自治体財政を反映し公共図書館の資料費は十分に措置されない状況が続いています。このような中での消費税の増税は、公共図書館の資料提供をさらに縮小させる結果をもたらすことにもつながります。
一方、出版物の軽減税率の適用を求める動きの中で、政府与党からは「有害図書」を排除する仕組みづくりが要請されています。6月11日に行なわれた活字文化議員連盟と子どもの未来を考える議員連盟の合同総会では、日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会の4団体が「書籍・雑誌の軽減税率適用に関する制度設計骨子(案)」をまとめ、軽減税率の対象図書を区分する自主管理団体「出版倫理コード管理機構」と第三者委員会「出版倫理審議委員会」の設立の準備を進めていると報告されました。この制度設計骨子(案)については公開されていないので評価することができませんが、出版・書店の業界団体が「有害図書」を自ら規定し、それ以外の出版物に軽減税率を適用することが目指されています。
「有害図書」を切り離すことでそれ以外の出版物に軽減税率が適用されれば、公共図書館の資料収集・提供への消費税増税の悪影響は避けられるという評価もあるかもしれません。しかし、私たちは出版の権力からの独立と検閲への反対が、自由な思想と出版を担保するという立場から、こうした自主規制の動きに反対することを表明します。あらゆる出版物に対して、軽減税率は適用されるべきです。
多様で自由な出版文化は、公共図書館がその一部であり、維持発展をその責務とする豊かな民主主義社会にとって、重要な構成要素です。私たちは、今後も読者の立場に立って、出版界との協力につとめていきます。