『絶歌』問題を機に図書館の自由について考え、行動しよう
2015年7月7日
『絶歌』問題を機に図書館の自由について考え、行動しよう
図書館問題研究会第62回全国大会
『週刊新潮』(2015年2月15日号、同年3月12日号)での未成年の容疑者の実名報道や、神戸市連続児童殺傷事件の加害者(元少年A)が執筆した『絶歌』(太田出版)が刊行された件など、図書館の資料収集と資料提供の自由の問題を強く意識させられる事例が相次いでいます。
『絶歌』に関しては、遺族感情を理由に販売あるいは陳列を自粛する書店も出ました。同様に「図書館での購入はしない」「閲覧には制限を行う」などと表明した首長や教育委員会、図書館もあることが報道されています。また住民の一部からも収集に反対する声があがっており、一冊の本をめぐって図書館では動揺が広がっています。
このことは「図書館の自由に関する宣言」(以下「自由宣言」)を考え、行動する上でも非常に重要な問題であり、私たちは次のとおり全国の図書館員に呼びかけます。
1 「自由宣言」をふまえ、資料を後世に残すため十分な議論をし、各館の選書基準に基づいた資料収集・提供を行いましょう。
2 社会的に議論されている資料について、考えを深め、評価するのは住民一人ひとりです。住民が議論や研究をすすめるためにも、図書館は多様な資料を収集し提供していきましょう。
3 出版や言論の自由は保障されなくてはなりません。図書館はそれを守る砦として機能しています。図書館の自主規制や資料収集の偏向は、住民の「知る自由」を阻害し、調査・研究、議論の場を奪う結果になることを忘れずに対処しましょう。
4 過去、図書館は今回と同様の内容を含む案件に直面し、その都度「自由宣言」をふまえ、試行錯誤しながら解決の糸口を見出してきました。過去の事例と常に照らし合わせ冷静に対処をすれば、解決策は見出せます。圧力や一部の意見に屈することなく、焦らず拙速な判断を慎んで、この問題に取り組んでいきましょう。
5 各地域で情報を収集、共有し、図書館の自由が侵されないよう見守っていきましょう。特に図書館問題研究会の会員は、図書館の自由の問題に直面し悩んでいる図書館員のサポートや適切なアドバイスを行いましょう。
6 住民に対して、「自由宣言」を分かりやすく説明し、理解を求めていきましょう。